case 既存設備を
『再生冷媒』で守り抜く

circumstance

HFC冷媒が手に入りにくい時代へ
- 既存設備を守る「再生冷媒」という選択 -

近年、国際的な環境規制の強化が進み、業務用の冷凍冷蔵庫や空調設備で広く使われてきたフッ素系冷媒の供給状況が年々厳しくなっています。

「冷媒の価格が以前と比べて3倍、4倍の価格になってきて、お客様の負担が確実に増えています」と変化を語るのは、広島市で主に冷凍冷蔵設備の導入・メンテナンスを手がける株式会社広島設備開発の代表取締役・中山猛氏。2024年から、冷媒の循環型環境対応スキーム「eRネットワーク®」に参画し、冷媒メーカーである三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社、事業創出会社の株式会社RYODENとともに冷媒の循環利用を推進しています。

今回は3社のキーパーソンに集まっていただき、冷媒規制の現状と再生冷媒の活用についてお話いただきました。

[今回お話を伺った皆さま]

  • 株式会社広島設備開発
    代表取締役 中山 猛 氏、第2技術部 部長冨岡 高志 氏

  • 三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
    サーマル&スペシャライズド ソリューションズ事業部門 環境冷媒営業部 小野 拓也 氏

  • 株式会社RYODEN
    FA・施設システム事業本部 施設システム事業部 施設システム事業推進部 冷熱事業推進グループ グループリーダー 大澤 亘 氏、東日本冷熱システム第一部 第二課 課長 庄司 和成 氏

RYODEN大澤氏、庄司氏、広島設備開発 中山氏、冨岡氏、三井・ケマーズ フロロプロダクツ 小野氏
写真左から、RYODEN大澤氏、庄司氏、広島設備開発 中山氏、冨岡氏、三井・ケマーズ フロロプロダクツ 小野氏

90% Regulated

現在市場で使われている冷媒の約9割が規制対象に

オゾン層保護の国際的な枠組として1987年にモントリオール議定書が採択されて以来、国際社会はフロンを抑制することでオゾン層保護に取り組んできました。2016年には地球温暖化の防止に貢献する「キガリ改正」が採択されて2019年に発効し、これにより温室効果の高いHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒の生産量が段階的に削減されることとなりました。

三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社 環境冷媒営業部の小野拓也氏は、冷媒規制の現状をこう説明します。

冷媒規制の現状について話す小野氏

冷媒規制の現状について話す小野氏

キガリ改正で規制対象になったHFC冷媒は、現在稼働している冷凍冷蔵設備・空調設備の約9割で使われています。一方で規制は毎年段階的に強化されており、冷媒メーカーは既にHFCの生産/輸入量をCO2換算で基準年(2015〜2017年平均)のおよそ50%に削減しました。新しく市場に出てくるHFC冷媒の量が減っているため、既存設備のメンテナンス用として使えるHFC冷媒が確実に減少しているのが現状です。

設備メーカー各社は規制に対応するため、温暖化係数(GWP値)の低い新冷媒を採用した新モデルへの切り替えを進めています。しかし設備の更新には大きな投資が必要で、既存設備を使い続けるユーザーも多い状況が続いています。

広島設備開発で保守・修理・メンテナンスを統括する第2技術部 部長の冨岡高志氏は、現場の状況をこう話します。

現場で感じた危機感について話す冨岡氏

現場で感じた危機感について話す冨岡氏

冷媒規制が始まって30年ほどが経ち、古い設備が少しずつ減ってきてはいますが、業務用設備は15年、20年と長くお使いいただくのが一般的です。直近では2年ほど前に導入いただいた設備でも規制対象の冷媒を使っているモデルもあり、メンテナンス需要は今後も確実に残っていきます。その一方で冷媒の生産量が減っているということで、何か手を打つ必要があると考えていました。

Refrigerant Reuse

「冷媒を再生する」という選択肢

この課題に対する新しい解決策として注目されているのが「冷媒の再生」という選択肢です。「冷媒の再生」は認知度が低く回収された冷媒のうち再生されるのは僅か40%程度となります。価格の高騰だけでなく入手が困難になる現実も近づいているにも関わらず、限りある資源の冷媒を大量のCO2を排出しながら破壊している現状が課題とされてきました。

再生冷媒のメリットについて話す庄司氏

再生冷媒のメリットについて話す庄司氏

冷媒の規制が進み冷熱機器を長く安心して使って頂くためには機器だけでなく冷媒の面でも広島設備開発様をサポート出来る仕組み作りが必要だと考え、三井・ケマーズ フロロプロダクツが運営する冷媒再生スキームを提案させて頂きました。RYODENの東日本冷熱システム第一部 庄司 和成氏は説明します。
冷媒再生スキームに参画頂くことで次のようなメリットが生まれます。

[冷媒を再生するメリット]

  • CO2排出量削減
    「蒸留精製法」による再生には焼却工程がないため、CO2排出量を大幅に削減できる

  • 資源保護
    限られたフロン資源を繰り返し利用することによる資源保護

  • 安定供給
    回収した冷媒を再生し、メンテナンス用冷媒として安定供給につなげられる

そこで、商社として冷熱設備を供給してきた株式会社RYODENは、冷媒メーカーの三井・ケマーズ フロロプロダクツが運営する「eRネットワーク®」にサポートメンバーとして参画し、再生冷媒の取扱いをスタートしました。

三井・ケマーズ フロロプロダクツ千葉工場の高純度蒸留精製設備
三井・ケマーズ フロロプロダクツ千葉工場の高純度蒸留精製設備

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冷媒再生のパイオニアが保証する新品同等の品質

冷媒メーカーである三井・ケマーズ フロロプロダクツは、2000年から冷媒の再生(当時は「再資源化」)にも取り組んできました。同社の冷媒再生方法は、蒸留塔で気化・液化を繰り返し、油分、水分、不純物を高効率で除去する「蒸留精製法」。自社開発の高純度蒸留精製設備を用いることで、使用済み冷媒をバージン品(新品)と同等の高品質な再生冷媒として提供しています。現在、全国で第一種フロン類再生業者として登録されている事業者は約42件ありますが、蒸留再生による高品質な再生処理を行っている企業は限られています。

eR Network®

eRネットワーク®—「冷媒の貯金」という発想

三井・ケマーズ フロロプロダクツが運営する冷媒再生スキーム「eRネットワーク®」は、設備更新やメンテナンスで発生する使用済み冷媒を回収・再生し、必要な設備に供給する循環型の仕組みです。

「例えば、お客様が設備を新しい低GWP冷媒のモデルに更新した際、使用済みのHFC冷媒を回収して当社の工場で高純度に再生します。再生した冷媒はHFC冷媒が必要な設備のメンテナンス用として供給し、日本全国で冷媒を循環させる仕組みです」(小野氏)

eRネットワーク®—「冷媒の貯金」という発想

そして、このネットワークの最大の特徴は「安定供給」です。回収した冷媒の量に応じて再生品を優先的に購入できる権利を得られるため、回収すればするほど、従来のHFC冷媒を多く確保できる、いわば「冷媒の貯金」ともいえる仕組みになっています。次世代冷媒への切り替えを進めつつ、既存機器のメンテナンスも両立させることでリスクを低減し、環境負荷も軽減する循環型のスキームです。

eRネットワーク®は全国展開しているので、日本全国どこで工事をしても、その地域のネットワーク参画企業に冷媒回収を依頼できる体制が整っています。また、破壊から再生への切り替え手順については、現在回収冷媒を引き渡している先を、ネットワークに参加している業者に「再生依頼」での引き渡しに変更するだけ。地域ごとのネットワーク業者については、RYODENが交渉から調整までをサポートしています。

3 Key Benefits

eRネットワーク®参画で得られる3つのメリット

設備工事事業者にとって、eRネットワーク®への参画メリットは主に3つあります。

[eRネットワーク®への参画メリット]

  • 環境負荷の低減
    破壊処理に比べて再生処理はCO2排出量が大幅に少なく、循環型社会の実現に貢献できます。

  • 調達不安の解消
    冷媒の新規生産量が減少する中、再生品を優先的に確保できることは、メンテナンス事業を継続する上で重要です。

  • コスト削減
    広島設備開発では、破壊処理費用と新規購入費用を合計した場合と比較して、現在のところ再生処理費用と再生品購入費用の合計のほうが安価になっています。

広島設備開発がeRネットワーク®に参画したのは2024年。それまでは回収した冷媒の100%を破壊処理していましたが、現在は9割以上を再生処理に切り替えました。

参画のメリットについて話す中山氏

参画のメリットについて話す中山氏

価格は市場の変動に左右されますが、今のところ新規購入よりも再生品のほうが安く手に入ります。ただ、価格以上に重要なのは『入手性の確保』です。将来、新規冷媒が手に入りにくくなったときでも、お客様に安定してサービスを提供できる。この仕組みに参加することで、将来への備えができることが何よりも大きいと感じています。

From Waste to Reuse

「破壊から再生へ」—冷媒循環の輪を広げたい

取材の最後に、ご参加いただいた方々から冷媒を取り扱う事業者の皆さまに向けて、メッセージを伺いました。

「eRネットワーク®への参画は、将来の冷媒の供給不足に対する備えという意味もありますが、やはり地球のためには破壊して新品を使うのではなく、再生品を使っていかなければならないと思います。地域に関係なく、全国の現場で回収が発生してもネットワークの中で対応いただけるので、この仕組みがもっと広がることを願っています」(中山氏)

「実務に携わる立場では、地球環境に悪影響を与えるフロンを生業として扱うことについて、心苦しく思う場面もありました。このスキームに参加して再生冷媒の活用に取り組むことで、業務として環境に良いことができるのはうれしいところです」(冨岡氏)

「今後規制が強化されることはあっても、元に戻ることはありません。フロンを希少な資源と考え、『破壊から再生へ』をキーワードに、日本全体でフロンの再生ができる仕組み作りを進めていきたいと考えています」(小野氏)

「RYODENはこれまで冷凍空調設備を提供する立場でしたが、機器だけでなく冷媒も扱えるようになったことで、将来的なメンテナンスまで含めたトータルな提案ができるようになりました。この先冷媒の調達が難しくなったとしても、RYODENとお付き合いいただければ大丈夫、とご安心いただけるような体制を強化して参ります」(大澤氏)

和やかな雰囲気で熱い議論が進んだ座談会の様子
和やかな雰囲気で熱い議論が進んだ座談会の様子

環境規制の強化により、冷媒を取り巻く状況は大きく変化しています。「使い捨て」から「循環利用」への転換は、環境面でもコスト面でも、そして事業継続の観点からも必要な選択です。eRネットワーク®という循環型の仕組みが全国に広がることで、既存設備を使い続けるユーザーにとっても、メンテナンス事業者にとっても、新しい選択肢が生まれています。

[取材協力]

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